現役の式場ピアニストがJASRAC結婚式問題について噛み砕いて解説してみる

音楽について思うこと

JASRACが発表した、結婚式での音楽利用に関するニュース

先日9月3日、巷で話題になったJASRACと結婚式に関するニュース。

JASRACが結婚披露宴で流す音楽に使用料徴収へ 1回で計1万5000円 - ライブドアニュース
日本音楽著作権協会(JASRAC)は、結婚式や結婚披露宴などブライダル目的で管理著作物を複製して使用したり、催物をビデオ録画する際の使用料について、包括的に算定し徴収するための試験的運用(実証実験)を10月1日か

こちらはJASRACの公式ホームページ。

ブライダル目的複製に係る包括使用料の試験的運用(実証実験)の実施について

このニュースが世に出てからネットでは「結婚式にまで金取るようになるのかよ!!(# ゚Д゚)!!」という怒りコメントがあちこちで噴出していましたが、実際に仕事で式場演奏をしている身としてもちょっと無視できない炎上の仕方をしていたので、とり急ぎ筆をとってみました。

結論から言うと、「追加で新しく徴収されるわけじゃないよ!というか前から使用料は業者が払ってたから!その支払い方法が変わるだけだから!」と誤解を解きたいのがこの記事の趣旨なのですが、そのあたりをちょっと解説してみたいと思います。

本題に入る前に一つ断っておくと、私自身は事務所(業者)から発注を受けて動く演奏者の端くれでしかないので、業者間の詳しい契約内容を具体的に知ってるわけではありません。あくまで自分が現場で見聞きして得た知識と、自分なりにJASRACの公式ホームページをリサーチして知った範囲で書かせていただきます。

もしリサーチ不足だったり不備や間違いがあった場合は後で訂正いたしますので、一旦ご容赦くださいm(_ _)m

新しく追加で徴収が始まるわけではない

まず、冒頭にも書いたように「これからはJASRAC管理曲を結婚式で使ったら追加で15,000円かかるぞ!」というのは勘違いです。

なぜなら、ブライダルでの音楽利用に関する著作権料は今までもずっと発生してたから。

そしてそれは、消費者側が知らないだけで、式場やその他音響に関する業者が払ってくれてたのです。たぶん音響代とかビデオ代とかそういう費用に込み込みになってるはず。

そもそもブライダルで音楽を使うときの著作権料ってどういう風に決まってんの?というのは、JASRAC的には大きく「演奏」と「複製」という区分に分けて考えています。(こちらの「ねとらぼ」さんの記事にあった文章がわかりやすいです↓)

JASRACが結婚式での「BGM用CD制作」や「記録用ビデオ」などに包括使用料を試験導入 新たな徴収かと勘違い広がる
以前から徴収されていました。

結婚式や披露宴などで、JASRACが管理する音楽を利用する際には、以前から著作権関係の手続きが必要でした。「演奏」の場合にはホテルや式場が手続きをし、「複製」の場合はホテル・結婚式場やコンテンツ制作事業者が手続きをしたり、新郎新婦や友人が直接手続きをすることになっています。

出典:JASRACが結婚式での「BGM用CD制作」や「記録用ビデオ」などに包括使用料を試験導入 新たな徴収かと勘違い広がる|ねとらぼ

「演奏」に関しては包括契約手続きがほとんどの所で済んでいる

まず、演奏になるのはこういうものです↓

・楽器や歌で生演奏をする
・買ってきたCD原盤を式場のデッキで流す(原盤がポイント)

こういうものに関しては、以前から式場やホテルなどの会場業者側がJASRACと手続きして契約を結んでくれてます。そしてこの契約というのは、今はほとんどの結婚式会場が「包括契約」になってるはず。

包括契約というのは、いわゆる「何曲使っても料金は一定でいいですよ契約」。

基本は著作権って使った曲数に応じて計算しなくちゃいけないんですが、この契約を結んでいれば「1年間○万円でJASRAC管理曲は使い放題!」になるんです。

つまり、この手続きが済んでいる会場であれば生演奏できるし、CD原盤ならかけても問題なし。

私がよく現場で見てるPAさんは必要な曲が入ったCD原盤を何枚も紙袋にどっさり入れてPA室に入っていかれます。私も会場側がちゃんと契約してくれてると思ってるので、特に著作権の心配をすることなく演奏のお仕事ができています。

「複製」にも包括契約を導入してみよう、という試み

さて、今回話題になってるのはもう一方の「複製」について。

複製というのは例えばこういうものです↓

・式場で流すための曲をCD-Rに焼く
・パソコンに曲を取り込んで音楽付きムービーを作る

つまり、「原盤以外に別の音楽データができてしまうこと」が複製にあたります。

これに関しては、原則「複製をする立場の人」が手続きをしなきゃいけないことになってました。つまり動画やDVDを作る業者とか、業者に頼まず手作りムービーを使いたいなら新郎新婦自身とか。

で、これに関しては演奏のような「包括契約」ではなく、制作物ごとに何曲使ったか申請して、その曲数に応じて使用料を計算する「曲別許諾」の形式を取っていました。

それを「この秋から実験的に包括契約を取り入れてみよう!」というのが今回発表されたニュースというわけ。

つまり、今まで曲の数に応じていちいち使用料を計算してたけど、今後は何曲使っても1回の挙式につきCDなら一律5,000円、動画なら一律10,000円ですよ、っていうことなのです。しかも実験対象は「以前からブライダル事業者としてJASRACと契約がある業者」なので、やっぱり消費者である新郎新婦には直接関係なさげ。

※一応JASRACの公式ホームページには契約しているブライダル業者リストがあります↓

JASRAC と利用許諾契約を締結している事業者一覧(ブライダル演出記録用録音・録画物)

まぁたしかに新郎新婦にとっては1回きりの結婚式なので手続きは1回だけで済みますが、業者はいろんなカップルのためにたくさんムービーを作って、それで商売してるんですよね。

それでいちいちあの挙式は何曲使ったからいくら、って毎回計算するより、CDは1挙式5,000円!動画は1挙式1万円!って決めてしまった方が計算手間も省けるし、何よりトータル金額もそっちのほうが安くなる可能性があります。そういう意味では、今回のニュースは動画制作業者にとってはそんなに悪い話じゃないのかも?

感情に流されずに事実を知ろうとする姿勢って難しいけど大事ね

というわけで、これがこの度にJASRAC結婚式問題の全貌になります。

JASRACは正直ね、私もいろいろ思うところはあります。過去にこんな記事書いたこともあります↓

JASRACの音楽教室への使用料請求ニュースを見て思ったこと。
JASRACの音楽教室への使用料請求ニュースに不満だらけです JASRACがピアノ教室での演奏にも著作権料を請求することを決定した、とのニュースが話題ですね。 私もピアニストという仕事をしているし、大学時代は結構大きなア...

あ、この時はっきりJASRACのこと嫌いって言ってますね私。でもワタシまだ消されてない。セフセフ←

だからね、今回これだけ不満噴出で炎上しちゃったのも、まぁ気持ちはわかる(´・ω・`)

それだけ徴収に一生懸命になるんだったらさ、同じくらい作家への還元にも熱心になってくれよ、って言いたいですホントに。使用料とるのはいいけど、そのお金どこに消えてるのさ??とかね。

今回のことだって、そもそも「結婚式の音楽にまで使用料かけるって、妥当なの?」とか、「かけるにしても、その値段って適正なの?」とか、「JASRAC側は徴収一辺倒だけど、当の作家側の意向はどうなのさ?」とかの議論も本来なら必要だろうし・・・

っていう感じで、正直なところ著作権ってグレーなことが本当に多いし、いろんな問題が絡みすぎてて、いつも考えるのが嫌になって頭パーンして匙投げてるんですけど(´・ω・`)←

でもやっぱり全部をいっぺんに思考したり解決することができなくても、少しの取っ掛かりからでも整理できるところは整理して、向き合い続けていかなきゃなと思ってこの文章を書いた次第であります。

残念ながら「わからないまま感情的に不満をぶつけ続ける」だけでは事態は進展しないですよね。というか今回の件でも切に感じましたけど、不満に誤解が被さっちゃうとややこしいことこの上ない。余計に考えるのが嫌になる悪循環!!

ついつい記事の見出しだけに反応してしまったり、よく調べもせずに誤解した感想だけ投げちゃったりって、私も本当によくやっちゃいますけど(自戒)、やっぱりそこをぐっとこらえて「一旦冷静に事実を学ぼうとする姿勢」を持とうとする努力は日ごろから怠ってはいけないのだと思いました。

※追記 [2019/9/16]

みなさん補足ありがとうございます・・・!今回は時間と気力とその他もろもろの余裕が足りずこれで精いっぱいでした・・・_(:3」z)_

私は作家さんが「JASRACから全然振り込みがない!」みたいな声を上げているのを見たことがあったのであんまりいい印象を持ってなかったんですが、最近の事情はまた違ってきてるんですかね。どうなんでしょ。また時間がとれたら調べてみよう・・・_(:3」z)_←力尽きた

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