「私たち人間は、自分を守るために、ずる賢く目に見えない”檻の中”へ逃げ込もうとする。」
変わりたいのに変われない。頑張ってるつもりなのに、いつも空回り。いつまでも同じことで悩み続けてる。自分なりに考えて行動しているつもりなのに、まるで終わりのない階段をずっとグルグル回っているように・・・
おかしい・・・!なにかがおかしい・・・!( ゚Д゚)
そんな事を考えたことがある方は、ぜひ手に取ってみてほしい本です。
もくじ
物語形式で心理学を学ぶ
巷の自己啓発本とこの本の一番の違いは、小説形式になっているということでしょう。
主人公の会社員・尾崎がとあるBarで一人の男と出会い、その男との会話を通して自分の心と向き合っていくにつれて、尾崎の周りの現実が変わっていくというストーリー。
もちろんただの小説ではなく、「ペルソナ」や「シャドウ」など、ユング心理学の基礎になる概念が、登場人物のセリフで解説されていくのでとても分かりやすいです。
物語形式で最初から最後まで進んでいくので、啓発本が苦手な方でもサクサク読み進められると思います(・∀・)
シャドウをコントロールする
人間は誰しも、「認めたくない自分の姿」というものがあります。
ホントは明るい人間でありたいのに、ついつい些細なことでイライラしてしまう。
周りにはテキパキ仕事をこなす人間だと思われているが、人の見ていないところでは怠けてしまう。
このイライラ、怠けのような、「認めたくない自分」のことをユング心理学の言葉でシャドウというんですね。
厄介なのが、認めたくないあまりシャドウを抑えつけようとすると、シャドウは余計に表に出てこようとすること。見たくない見たくない、と思うほど自分の嫌な面が目につくような行動をとってしまい、また自己嫌悪・・・という罠にはまってしまいます(´・ω・`)
そんなシャドウを上手くコントロールするコツが、「いまの自分を大切にする」ということだと、本には書かれています。
「鶴田はいまの自分を大事にしてたんやないかな。いま思うこと、いま感じること。今の自分が”わたし”やと思ってたんちゃうやろか。知ってか知らずかわからんけどな。シャドウをコントロールするコツは、“私はこういう人間だ“と思い込まずに、その瞬間瞬間を生きることや。人間は常に進化しとる。人間は変わるそうやから、今思うこと、今感じること。それを大切にするねん」
p.53 Chapter 2
自分には「ない」という思い込みが上手くいかない元凶
「過剰な自我は飢餓感から生まれる。飢餓感は幼い頃の愛の欠乏から生まれる。意識的であれ、無意識的であれ」
p.54 Chapter 2
自分の中にある飢餓感。自分は何かが足りないと思う欠乏感。これがある意味、心の苦しさの元凶。
その穴を埋めたくて、必死になって人から好かれようとしたり、認められたくて頑張ったりする。つまり、本当は愛がほしいのだけど、それを他のもので埋めようとするから話がおかしくなるんです(´・ω・`)
埋めようとしてもなかなか埋まらない。というか、そもそもホントに欲しいのは愛なのだから他のもので上手く埋まるはずもない。
さらにもっと巧妙なのが、自分に穴があるなんて、自分が欠けているなんて、認めたくない。
だから人は、檻に入る。
自分を守るために、人は心の檻に入る
この本では、私たちがついついやってしまいがちな「自己正当化」を、「檻に入る」という言葉を使って表しています。
例えば、本の中ではアルコール中毒に悩む男性を例にあげて、檻について話しているシーンがあります。
男はアルコールをやめたい。でもやめられない。でも何とかしたくて、ある日ふと「一週間で自分を変える方法」なる本を見つける。そこには「ポジティブな言葉を発するようにすれば自分を変えられる」とあり、その日から男は毎日「自分は幸せだ、ハッピーだ」と意識して口にするようになった・・・
↑これが「檻に入る」です(・ω・)
「アルコールがやめられない自分」を認めたくないがために、無意識に「やめようと頑張っている自分」を演出することで自分を正当化する・・・
こういうの、ついついやっちゃいません?私はもう書いてて耳が痛い(´д`。)泣
本当は檻の外に出て、広い世界に羽ばたきたい。自分のやりたいことをやってみたい。理想の自分に生まれ変わりたい。
でもこわい(´・ω・`)
そんな恐怖心を見事に切っていると思いました。
この怖さには「うまくいくかわからない」という怖さと、「今までの自分から変わってしまう」という怖さ、更には「今の自分がダメであることを認めることになる」という怖さなど、いろいろな種類があると私は思うんですね。
だから、自分から進んで檻の中に居続ける。檻に入っている間は、不自由ではあるけれど危険はありません。自分に向き合う、という怖いことから逃れるために、檻の中で自分を正当化し続ける。
でもそうすると、ずっとずっと不自由なまま。
結局この不自由さから逃れるためには、自分のあるがままを認め、受け入れるという方法しかないんです。
「そう。男は檻に入っています。お酒を飲む言い訳をし、お酒を飲むことを正当化しているかぎり何をやっても変わりません。ではどうすれば良いのでしょう?檻から出るためにはどうすればいいのでしょう?」
酒をやめることだ。でも、そんなことが簡単にできるなら誰も苦労しない。
マスターは目を少し細めて尾崎に言った。
「自分の力でやめられないなら、病院に行くことです。アルコール依存間者専門の。それで認めるのです。言い訳も正当化もせずに自分がアル中だと認めるのです。心の病気だと認めるのです」
p.132 Chapter 6
こんな方々に、まず読んでほしい
・休みの日でもイライラしている・失敗したら、他人のせいにしてしまう
・すぐ人と衝突してしまう
・孤独感が満たされない
・本当は他人を信用できない
・自分に自信がない
・他人を攻撃し始めると止まらなくなる
・すぐに「でも~」と言ってしまう
・過去のことが忘れられない
・自分には運がないと思う
本に実際に書いてあるオススメしたい人はこんな感じですが、読んだ率直な感想としては「イライラすると自分の外に矛先が向いてしまう人」によりマッチするんじゃないかなと思いました。
もちろん、そういう人とは逆にすぐに自分を責めてしまう、怒りの矛先が自分に向きやすい人(自罰傾向)にもぜひ読んで頂きたいのですが、そういう人は書いてある言葉をそのまま受け取ってしまうとちょっとショックが大きいかもです。「何事も問題は自分にある」という文脈が割とド直球にかいてあったりするので。
まぁ他罰も自罰も根っこは一緒なので、そういう人はこの本の「他人」という文脈を全部「自分」に置き換えて読み進めるとよいと思います(・∀・)
決して「そうだよどうせ私が悪いんだよー」とスネないように・・・それは結局、「自分という他人」にあたってることと一緒なのでね。
お話としてもよく作り込まれていると思いました
私たちが普段何気なく生活しているなかでついついやってしまいがちな「逃げ」について、イタイところをうまーくついてくるような内容でした(・ω・)
小説なので、若干これは話として出来すぎだろ!と思ったり、登場人物の闇が深すぎる設定だったり、というのは感じましたが、人の心って複雑なのでこれくらいオーバーに書かれていた方が分かりやすいのかなと思ったり。
上手く出来てるな~と思ったのは、主な舞台になっているBarの店名がバスティーユ(フランス革命で最初に襲撃された牢獄の名前)だったり、Barでかかっている音楽が著名人の心の問題とリンクしていたりしたところ。例えば、
・尾崎と男の初対面のシーンで、男が口ずさむ曲が尾崎豊の卒業→心理学界隈(?)でちょいちょい言われる「尾崎豊は自分で被った”カリスマのペルソナ”に勝てなかった説」を表している?
・終盤で店にマーラーの曲が流れる→マーラーはウィーンの作曲家。晩年は精神を病んでフロイトのお世話になっていた。また、ファーストネームがユングと同じ「グスタフ」
などなど。他にも細かいけど「おっ」という小ネタ設定がいろいろちりばめられていたので、「ここでなんでこの人の名前を出したんだろう?」と考えながら読むのも面白かったです(´ω`)
変わりたいのになかなかかわれない・・・なんでいつも上手くいかないんだろう?
そんな悩みをお持ちの方はぜひ手に取ってみては。きっと気づきがたくさん得られると思います(´ω`)↓
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